「湖国を描く絵画展」応募の顛末

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 滋賀県が主催する「第19回 湖国を描く絵画展」に初めて応募した。
 そのドタバタの顛末をまとめてみようと思う。

1.きっかけ
 この公募展を知ったのは去年のこと。
 実家のある滋賀に移り住むようになって、近くの施設でやっていた入選作品の展覧会をたまたま覗いてみたというのがきっかけ。
 応募してみようと思ったのは今年に入ってからのことだったろうか。

 何しろいままでF6号サイズしか描いていないので、最低でも30号という規定は私にとってはビッグチャレンジ。
 応募書類をもらいに行ったら、係の人が「1枚でいいんですか。2作品まで出せますからもう1枚どうですか」と押し付けるようにもう1枚をくれた。2つも作品を出すなどまるっきり考えていなかったが書類は2枚もらい、そして、結局2つの作品を提出することになる。
 
 応募するとしたら何を(どこを)描くか、テーマはすでに決まっていた。
 何度も現場に足を運び、同じ風景を何度か描いているその場所。志那町にある、琵琶湖の内湖である平湖と柳平湖、これしかないと思っていた。

2.制作開始
 水彩画である。
 しかし30号以上のサイズの紙は持っていない。大阪の画材店、笹部洋画材料店でモンバルキャンソンのロールを買った(アルシュがよいというのはわかっているが、高くて手が出ない)。
 これを水張りして、描き始めてびっくり。
 筆で紙表面をこすると、まるで消しゴムクズみたいに紙がぼろぼろになってくるのだ。絵の具の吸い込み方も、それまで使っていたウォーターフォードとはずいぶん違う。
 日本画でやるようなドーサ引きというのをしてみれば?とも教えてもらったが、なにぶん初めてのことで加減がまったくわからない。
 しかたがないので、1作目はそのまま、なるべくこすらずに描いてみるということで対処。
 2作目は胡粉を混ぜたジェッソで下塗りをしてみた。しかしこれも、絵の具の吸い込みが悪くなり、ぼかしがうまくいかない。苦労ばかりさせられたのであった。

 大きなサイズになると、絵さえ描けばよいというものではない。額装を考えなければならない。
 額に大金などとても使えないから、すべて自作である。
 ホームセンターでシナベニヤを買ってパネルを作り、額の部分も杉の棒材などを購入して日曜大工。
 大作を作るには大工仕事に汗を流さなければならないのだと初めて気がついた。
 そうやって、大工仕事とともに絵を描き進め、どうにかこうにか2作品を完成させて、あとは搬入を待つのみとなった。

3.搬入騒動
 8月半ば、車に作品を積み込んで所定の施設に持っていく。
 10時開始で、10時半ごろに行った時にはすでに搬入の行列ができていた。
 係の人に絵を預ける。今回は規定の最小限であるM30号と、それより一回り大きな作品の2つを出した。

 係の人がメジャーを持って絵のサイズを測り始めた。
 ちょっと不安になった。作品の一つが規定サイズギリギリだったからだ。
 その不安が的中。
 「タテが1センチ足りないな。こりゃ微妙だな」と…。

 測っているのは額装した状態での絵の部分の大きさだ。私は原画のサイズだと理解していたので、これはちょっとヤバいかな…と。
 「額に隠れた部分が2センチほどあるから、規定には合ってるはずなんですが‥‥」と言うと、その人は責任者の女性を呼んできた。
 女性は、「作品が巡回展示されると、時にはサイズに対して、規定違反なのになぜ入選させたなどとクレームが出ることがあって…」と説明してから、「ちょっと館長を呼んできますので」と今度は館長までやってきた。

 結局、出品は認めるものの、「もしサイズに関するクレームがあったら、額装を変更するなどしていだかないといけませんが、了解していただけますか」というところで一応話は決着した。もちろんこれは、もし入選したらという仮定の話だ。

 ひとまず胸をなでおろして出品手続きの列に並んでいたら、手続き中の男性と職員との間で何やらトラブル。
 また「1センチ足りないんです」という声が聞こえる。
 男性は「これとおんなじサイズで去年ちゃんと受理されてるやないか。なんでこれがイカンのや!」と声を荒らげだし、「作品の応募が増え、競争率も高くなって、条件も厳しく審査するようになりまして…」などという説明にも納得せず、「アカンのなら最初からアカンと言え」と喧嘩腰。結局は「好きなようにしてくれ」と捨てぜりふを吐いて帰っていった。
 帰ってからもう一度出品規定を読み直してみたが、書いてあるのは「サイズにはパネルや額の大きさは含みません」とだけ。ということは、素直に読めばサイズとは絵そのものの大きさだとしか受け取れないはずだ。
 19回を数える公募展にしてはいささか甘いところがあるのではないかと感じたのであった。

4.公開審査
 この公募展の面白いところは、審査を公開でやるということだ。
 公開といっても見学できるのは出品をし、抽選に当たった人だけである。
 8月21日、大津の滋賀銀行の一室を使ってその公開審査が行われた。抽選に当たった私も参加。

 一般の部では応募総数291点、そのうち入選作品を85点選ぶとのこと。
 その85点の中から、入賞作品計22点が選ばれる。最高はグランプリで賞金50万円。

 審査員は洋画家、日本画家、美術史研究家の3人。
 審査は水彩も油彩も、日本画、水墨画版画、みなごちゃまぜで順不同である。
 審査員の挙手によって、3票からゼロ票までの点数がつけられる。

 最初に、応募総数8点の高校生の部からスタートした。
 ここでもう度肝を抜かれる。
 どこが高校生なんだろう、ほとんどの作品がプロ並みの完成度で、のっけから「負けた」気分にさせられてしまった。
 いやもう、高校生という特別枠など要らないのではないか。

 一般の部の291点についての挙手選定が、午前中で一挙に行われた。
 私の作品は後半に登場した。ドキドキである。
 「柳平湖夕景」と題した1つ目(サイズ問題でトラブった作品。Aとしておく)は1票だった。
 「平湖冬景」と名づけた2つ目(Bとしておく)は…、手が挙がらない…と思ったがやや遅れて別の審査員から1票。
 もしここで2票入っていれば、これからあとさらにドキドキする必要もなかった。が、1票では、入選総数次第でキャンセルされることもあり得るのだ。

 この一次審査で、3票作品が18点。つまりこれらは入賞確実ということだ。
 2票作品の数は覚えていないが、少なくともここまでは入選確実。
 そして1票作品が60数点あった。ということは、合計で85点を20点ほどオーバー。
 すなわち、再審査により、1票作品の3割ほどは落とされるということである。こわ〜。

 再審査では、私の作品Aはまた1票だった。作品Bは、今度は2票。
 そして、総数を85に合わせるための再々審査。
 作品Aはどうなるか。
 「この作品は2点出品のひとつで、もう一点がさっき2票入っています」
 「あ、じゃあこれはナシだね」
ということになった。

 応募要領の説明では、テーマが似たような作品2点の場合、「入賞」は1点のみとなることがあると書かれている。
 しかし実際には似ている似ていないにかかわらず、ほとんど自動的に1作者から1点となったようだ。

 というわけで、私の作品B「平湖冬景」が入選と決まった。
 自分としては、Aの「柳平湖夕景」の方が本命だったので、この結果は意外だった。

5.公募の極意?
 この公開審査を通して、色々と学ぶことがあった。
 作品全体のレベルは高く、選外となった作品でも入賞作と紙一重だ。
 もしもう一度審査をしていれば、逆転する場合だってあっただろうと思う。
 それだけに、この平均レベルから少しでも下回るような、ほんのちょっとでも素人臭さが出ている作品は一次審査でまず確実に落とされている。
 例えばグループ展などでよく見かけるような、「おじいちゃんが孫の絵を描いた」たぐいは一発で選外である。

 ほとんどが技法的にも優れている。それだけに、普通の景色を普通に描いた(一般的に見れば非常に上手い)程度の作品は採用されない。
 かといって、極端に奇をてらった作品も(少なくとも今回は)嫌われたようだ。
 概してリアリティのある作品が好まれたように思える(しかしまた「写真みたいに上手」だけでは不採用となる)。

 私の眼から見て、これはグランプリかなと思われる作品があった。当然3票が入っている。
 「湖風」というタイトルで、夏の風にそよぐ草をアップで描いた油彩作品。
 一目で風が吹いている様子をリアルに感じさせてくれ、タイトルとみごとにマッチしていた。
 これは今回金賞となった。

 グランプリは日本画で、私としては全然評価しない作品だったが、技法的にも優れているのかもしれない。

 小手先でいくら上手に描いても公募では勝てない!と実感した。
 テーマが極めて重要だ。
 審査員によって好みは分かれるとはいいながら、観客も含め誰もが「これはいい!」と思える作品があるというのも事実だ。恐らくそれはテーマの選び方で決まる。
 そしてタイトルも大事だなぁと今回つくづく思った。ただ絵の内容をダラダラ説明しているタイトルは逆効果だということ。

 似た作品は、どんなに優秀でも早い者勝ちだという「運」も感じる。つまり先に審査員の目に触れたほうが採用され、あとからは「また同じような作品」として無視される傾向にあるようだから。
 他人が描かない、目をつけないテーマに着目して、奇をてらわず、類型に陥らず、インパクトがある作品。
 そういうものが描ければ、グランプリも夢ではないのかもしれない。
******

※ 今回うっかりして、入選作の完成時の写真を撮っていなかった。そのためここには掲載できず。お粗末でした。

「湖国を描く絵画展」応募の顛末」への2件のフィードバック

  1. 家主 投稿作成者

    のび太さん、ありがとうございます。
    実はこのあと、滋賀県では草津市が主催する美術展があって、それにも応募しようと思っています。
    何しろ出品料が600円と格安(笑)。サイズは30〜80号までと、今回より大きくなります。
    今回学んだことを活かして、新たな作品に挑戦したいなと思っています。選外作品はまた別のところに応募しようかなぁと思案中です。
    今後ともご指導よろしくお願いいたします。

  2. のび太

    まずは入選おめでとうございます。

    モンバルキャンソンもジェッソも大変でしたね。でもいろいろ経験してわかることも多いから、良い経験だったと考えましょう(笑)。それにしてもロール紙ではつかいでがありますねぇ。ウォーターフォードも高い紙ですが、ロールもあるようですね。

    審査の過程が公開というのはめずらしいですね。でも公募展ならそれくらいやって欲しいですよね。
    審査基準・方法のようなものも大体私の知っていることと同じようなものですね。

    ただ、どちらが入選になるかどうかは自分でも予測がつかないことが多いようです。私の場合もそんなことがありましたし…。印象的なことは必要ですが、不自然さを感じるものは難しいかもしれないという気もしたりしています。
    入選しなかったものは、落選ではなく「選外」ということですから、他の公募展にもそのまま出すすことは出来ます。

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