1957年、まだ日本が高度経済成長に突入する以前の曲である。
「バスガール」という言葉自体すでに死語といえるが、女は家にいるのが普通と思われていた時代に、明るく働く女性はある種新しい時代を感じさせたのかもしれない。
もちろん、いまやバスに車掌が乗っていたこと自体、知らない人が多いのだろうけれども。
歌:初代コロムビア・ローズ 作詞:丘灯至夫 作曲:上原げんと
1 若い希望も 恋もある
ビルの街から 山の手へ
紺の制服 身につけて
私は東京の バスガール
発車オーライ
明るく明るく 走るのよ
2 昨日こころに とめた方
今日はきれいな 人つれて
夢ははかなく 破れても
くじけちゃいけない バスガール
発車オーライ
明るく明るく 走るのよ
3 酔ったお客の 意地わるさ
いやな言葉で どなられて
ほろり落とした ひとしずく
それでも東京の バスガール
発車オーライ
明るく明るく 走るのよ
時代を感じさせるのは3番の歌詞ではないだろうか。
酔客に絡まれれば、今なら直ちにセクハラとして糾弾されるだろう。
しかしこの時代、もちろんハラスメントいう概念はなかった。女性、特に若い女性は少々イヤなことがあっても我慢しなければならず、そのような態度が女性の規範として強要されていたということもできる。
セクシャルハラスメントという概念が日本で定着したのは90年台。この言葉は、それまで不当にも我慢を強いられてきた女性を解放する、強力な武器となった。
それよりはるか前に作られたこの曲、当時の風俗を正確に描いているとも言えるし、「明るく走るのよ」とやはり我慢を強いるメッセージを伝えているとも言える。