フェリーニの「サテリコン」

 多分40年ぶりに、フェリーニの「サテリコン」を観る。
 ツタヤの宅配DVDにて。
 昔観た時、何がなんだかわけがわからず、ただ悪夢を見たような記憶だけがずっと残っていた。
 あの悪夢は何だったのだろうと胸に引っかかっていて、今回はその悪夢の正体を見極める解決編…であればよかったが、いま観ても、やっぱりわけはわからない。

 何とまぁ絢爛豪華な退廃であることよ。
 キリスト以前のローマの物語。
 予告編にあったキャッチコピーが面白い。「キリスト以前、フェリーニ以後」。

 映画の制作は1969年。
 建物の崩壊シーンなど、現在ならCGでたやすくできることでも、当時そんな技術はなかった。どのようにして特撮を行なったのか、メイキングを記録した「フェリーニ サテリコン日誌」という映画があるそうだが、残念ながら入手困難。見てみたいものだ。
 
 大道具以外に、登場人物についても(特にその他大勢の出演者たち)感嘆することは多い。
 何しろ退廃の成り上がり貴族である。食って寝てまぐわうことしかない生活。そんな生活ぶりを見せるための異形の登場人物たち。
 よくもまぁこれだけの「美しくない」人々を集めたものだと感心する。
 
 ミロス・フォアマンの「カッコーの巣の上で」なら、役者たちは精神病患者を演じればよかった。
 しかしこのサテリコンでは、一見して異様な風体の男女が必要だ。それをよくもまぁ集めたものだと感心せざるを得ない。
 当然職業俳優だけでは無理であったろう。

 映画のストーリーのととりとめなさは、おそらく原作の小説に依っているのであろうと思われる。
 全容がよくわかっていない小説をここまでの映画にしたのは、やはりフェリーニの手柄というべきかもしれない。
 それにしても、メイキングを見てみたいものだ。

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