父の親友であったSさん(2人とも故人)は、我が家に来た時によく戦争の話をしてくれた。
Sさんはビルマ戦線での生き残りのひとりだった。
「前線での長い戦闘が終わって、かろうじて部隊へ戻ってきたんや。
そしたら、大勢の兵隊が、部隊の外で、地べたに座り込んで、足を投げ出しずら〜っと並んどるやないか。
帰るのを待ってくれてたんか、と思うて、いま戻ったぞ〜と近寄っていったら、待ってくれてたんやない、みんな、死んどるんや‥‥」
前後の話は覚えていないが、この個所だけはゾッとして今も記憶に残っている。戦闘で死んだのではない。衛生状態の悪化、食料不足等で、赤痢などの病気のために下痢で糞尿まみれになりながら犬死したのである。
満州へ行った父の話も含め、もっときちんと話をきいておけばよかったと、今になって思う。