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3日がかりで谷崎潤一郎『細雪』を再読した。
最初に読んだときは、これだけの大長編を何ら破綻もなく物語の齟齬もなく書ききる力量に感嘆したものだったが、中身についてはほとんど忘れてしまっていた。
再読する気になったのは、今年8月に大阪のシネ・ヌーヴォで谷崎映画の特集があり、これまで3本映画化されている『細雪』のうち2本を立て続けに見たことがきっかけになった。
その直後に、もう一本のいちばん新しい作品も見て、それぞれの映画の作り方に興味も持ち、また疑問も抱いて、ではもう一度原作を読んでみようという気になったのであった。
さて3本の映画とは次の通り。
1950年版
監督:阿部豊 脚本:八住利雄
出演者:高峰秀子、山根寿子、轟夕起子、花井蘭子 他
1959年版
監督:島耕二 脚本:八住利雄
出演者:京マチ子、山本富士子、轟夕起子、叶順子 他
1983年版
監督:市川崑 脚本:日高真也
出演者:岸惠子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子 他
50年版と59年版の脚本が同じ八住利雄とあとから知って驚いた。
50年版の作りは、この大作を145分の映画にまとめるにあたって、冒頭ナレーションで背景説明をやってしまうという、素人映画もかくやと思われるような下手な手法をとっていた点で印象に残っている。
作品としては、物語の中心人物のうち4女妙子役の高峰秀子にはっきりと焦点を当てている。
これはおそらく、原作者の谷崎自身が高峰秀子のファンであったということと大いに関係があるのだろう。