完全にかけない

お茶の袋である。

ある良心的な生協から購入したもので、生産している茶園では完全無農薬でお茶を作っている。一般の野菜と違い、洗わずに製品化されるだけに、お茶に限っては無農薬のものしか安心して購入できない。

さてところが、この「完全に農薬をかけないお茶」というキャッチコピーにクレームがついた。というか私がつけた。これはどういう意味なのかと。

「完全に農薬をかけない」ということは、不完全にはかけたという意味なのか。というのはこの文では、「完全に」は「完全には」という意味にも読めるからだ。

仲間と議論をしているうちに、さらに別の観点から疑問が呈された。

なぜ「農薬をかけない」と言うのだろうか、と。「農薬を使っていない」となぜ言わないのだろうか、と。

深読みすれば、実はこの茶園では土壌は農薬で汚染されているが、新たに農薬を撒くことはやっていないので、それで「かけない」とは言えても「使っていない」とは言えない事情があるのではないかと。

そういう読みが可能であるなら、単に日本語の表現の問題ではなくなってくる。真偽を確かめなくてはならない。

もしも完全無農薬のお茶であるなら、なんと表現すればよいか。

・完全無農薬のお茶 ––– 表現が硬い?

・農薬を全く使っていないお茶 ––– これならよいかも。

そもそも、副詞(用言を修飾する)は修飾される語にできるだけ接近して用いるのが誤読を避けるための文章術の鉄則だ。

しかしこの「完全に」は、そうやっても今ひとつわかりにくいという不思議な性質がある。つまり「無農薬を完全にかけないお茶」としても、あまり変わりばえがしないのだ。

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