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無理っぽい理屈

最初、なぜ「20分以上の駐車」がお客様のご迷惑になるのだろうと考えた。

他の客にとっては20分であろうが5分であろうが、そのときふさがっていれば同じこと。「20分以上」が具体的な意味を持つわけではない。

さらに考えてみると、これはどうも「お客様のご迷惑」ではなさそうだ。

長時間駐車されて、客の回転が悪くなるのが困るということなんだろう。つまりは「店にとって迷惑」ということだ。

しかしそこは客商売。客に向かってあからさまに迷惑とは言えない。そこで「他のお客様」が登場したというわけ。

なかなかに苦労が忍ばれる文である。

(撮影地:神奈川県相模原市)

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発見したら1万円?

この看板、こんな意味に受け取れないか。

「無断駐車を発見した」人には、「1万円をお支払い頂く」と。

だったら、発見しても見て見ぬふりをしよう。反則金を取られてしまうから。

 

もちろん、そうでないことはわかるわけだが、読み手が善意に解釈して初めて正しい意味がわかるような文章は、やはり悪文といってよい。

「発見する」と「支払う」という2つの動詞のそれぞれが違う主語を持っているというところにこの悪文の原因がある。

さらにその大元をたどれば、わざわざ「発見する」などという言葉を使ったところに最初のとっかかりがある。

もっと簡単に「当駐車場での無断駐車には」とすれば何の問題もなかった。

しかしおそらくこの駐車場では、日々無断駐車とその発見という大バトルが繰り広げられているのだろう。そのために駐車場の管理者も、つい発見と言いたくなってしまったわけだ。胸中察するに余りあるものがある。

(撮影地:神奈川県相模原市)

大げさな表現

某私鉄のトイレ。「アラームの鳴る火災報知器」とでも言えばいいところを、「音響警報が鳴動する感知器」と表現されている。

いかにも恐ろしいことが起こるぞと言いたいのだろうか。

お役所ならありがちな表現。この私鉄にはひょっとして官僚主義が跋扈しているのか?

(撮影地:東京都目黒区、東急目黒駅)

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素朴な文章

何とも講評に困るが、小学生などにありがちな文章。

一行目を「‥‥される、」と連体形にさえすれば文法的にも正しい。一方を連用形、他方を連体形とちぐはぐだから、妙な文章になってしまうわけだ。

「意味が通じればいいではないか」と開き直られそうな気もするが‥‥。

 

(撮影地:滋賀県草津市)

たまにならいいのか

公園のトイレ。管理者の悲痛な叫びとでも言おうか。

「度々持って行かないでください」‥‥、つまり石けんを何度も失敬する人に対してのお願い文である。

ということは、たまに持って行く程度ならいいのだろうか。とても遠慮がちなお願いだ。

だが「見つけたら警察に通報」するとは言っても、それが初犯か「度々持って行く」犯人か、どうやってわかるのだろう。

簡単な文章ではあるが、ナゾを含んでいる。

(撮影地:神奈川県相模原市)