自作パソコンは盛んに作られ、大きな市場となっているのに、なぜ自作Macはないのか。
Macintoshファンなら誰しも抱く疑問だろう。
しかし実際には、密かに自作Macは作られている。
詳細な製作報告をしているサイトもかなりの数にのぼっている。
ただ、それらの製作報告の多くが「自作Macの夢」などのタイトルをつけて、これは現実ではありません、私の夢なのですなどと言いながら、忍びやかに公開しているのである。
なぜそんな持って回った記事になるのか。
Appleは、自作Macを認めていないからである。
MacOSはAppleが用意した正式のハードウェアにインストールした時のみライセンスが与えられるという契約になっている。
たとえ自作である(販売などを目的としていない)場合でも、ライセンス違反であるというAppleの主張だ。
Windowsなどは、OSを購入すればどんなマシンにインストールしようと勝手である。対価を支払ってOSを購入するのだから、それをどう使おうが好き好きではないかという主張は当然のことといえる。
しかしMacOSはそうではない。
だからこそ、法的には問題があるとしてもMacを自作しようとする人があとをたたないのだ。
もっとも、Appleも1994〜1998年ごろまでは他社製のハードウェアにMacOSを載せてもよいとする互換機戦略を採っていた。そこで世界中の何社かがMac互換機を製造販売した。
ちょうどそのころは、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズが社を追われて不在だった時期に当たる。
97年にジョブズがAppleに復帰し、互換機路線は封印された。
その後ジョブズはiMacの販売など新しい戦略で、ご存知の通りのカリスマ性を高めていった。
ジョブズがいなければ今日のAppleは存在していなかっただろうということは誰しも認めるにしても、果たして「自作」すら認めない互換機否定路線が正しかったのかどうかは異論のあるところだろう。
ハードウェアに紐付けせず自由な個人製作を認めていれば、もっと多様な、Windows以上のMac文化が花開いたのではないかと考える人もいる。
そして、現在も変わらぬAppleのその方針にもかかわらず、いや、かえってその方針ゆえに、自作Macを渇望するムーブメントは裏側でますます盛んになっている。
いくつかの方法があるようだが、現在いちばん有名なものが「X86プロジェクト」と呼ばれるものだ。
私が見た「夢」をここで語ることができるのも、このプロジェクトに全面的に負うてのことである。
(つづく)