N町内会の事務所は、傘下のわれわれ町内会が書類作りなどをするためにコピー機、輪転機が利用できるようになっている。
来週予定している総会準備の役員会に向けて、目下総会議案書案づくりの真っ最中である(このために私は毎日かかりきりである)。
きょうの午前中、私と会長のY氏とでこの事務所へ行き、役員人数分のコピーをした。
Y氏はせっかくだから総会の日程を伝えておこうと事務所内に入った。たまたまN町内会長であるF氏がいた。
Y氏が日程を言おうとすると、「正式に会長あての招請状を出せ」と命令口調のあたりはばからぬ大声である。
Y氏が、いやとりあえずお伝えして…というと、F氏は「お前ら、N町内会を脱退するそうやな」とまた大声。
Y氏が、いやそんなことはまだ、これから考えるので、今は何も…としどろもどろになっていると、F氏「そんなにいやなら出て行け。払うもんも払わんと出すもん出せやと? そんな身勝手が通るか!」と脅迫である。
もちろんわが町内会で、N町内会を離脱するなどという話は何も出ていないし(以前から離脱論はあるが)、離脱を口にしたものがいるわけもない。
先日われわれ3人が話を聞きに行ったことを、そのとき応対した副会長が、「あの町内の連中は離脱を考えている」とデフォルメして伝えたに違いないのだ。
彼らにとっては、傘下の町内会は上部団体の指示に唯々諾々と従うもので、逆らうことなどありえない事態。つまりあの「団交」が即反逆と映ったのだと思われる。
この罵声を浴びて、Y氏はすっかりビビってしまった様子で、小声で「法律論など振り回さず、黙って払ったほうが万事うまく収まるのでは…」と言う始末。完全に腰が引けてしまっている。
午後、書類作成の作業が一段落したので時間ができ、以前から気になっていたことを実行に移そうと車に乗った。
ひとつは、町内会の上部下部などという組織形態になにか法的な裏付けがあるのかどうか確認したかった。また、町内会として独立するのはどれくらい大変なのかの確認もしたかった。
そこで出向いたのは市役所の「まちづくり」課である。
2人の女性が応対して、丁寧にせつめいしてくれた。
それまで私は、町内会というのは地方自治法第260条に規定のある「認可地縁団体」とイコールだと思っていたが、そうではなく、認可を受けているのは町内で土地を所有するような少数の町内会のみ。あとは市には届け出はするものの完全な任意団体だということだった。
したがって町内会自体の仕組みは個々バラバラだということ。これは新しい知見だった。
町内会としての独立のことも教えてくれた。
独立の際に負担としてあるのは、市からの委託業務を引き受けなければならないということで、しかしアンケートだの表彰者の推薦だのといったごく簡単なこと。
しかも代わりに委託料を出してくれるというのだから、逆に潤うわけだ。
その他の雑務も、上部団体にぶら下がっているのとほとんど同じで、独立のデメリットは何もないといってよい。
そうだったか!と発見したのは、前回「傘下の町内会が無心すると、その時の会長の気分ひとつで大枚が積まれる」と書いたのが嘘っぱちだとわかったことである。
以前わが町内会では、集会所の増改築をN町内会に頼んだ。そのとき会長のF氏は「俺の任期の間に頼めば金を出してやる」と言っていたからである。
しかし「まちづくり」の資料を読めば、独立した町内会なら市に申請すれば増改築予算がつくと書いてある。
つまりF氏は、市の予算を引っ張ってくるだけにもかかわらず、恩着せがましく「俺の一存で」できるかのように吹聴していて、当時のわが町内会の役員たちはすっかり騙されていたのだ。
独立は書類1枚。実に簡単。独立は大変と思い込んでいた人はことごとく騙されているのである。
さて、市役所をあとにして今度は市の社会福祉協議会へ行ってみた。
目的は、N町内会から降ろされる寄付金等の強制に根拠があるのかどうか、社会福祉協議会自体は町内会に対してどのような依頼をしているのか、ということを知りたかった。
結論的に、応対してくれた女性は、「社会福祉協議会の募金、寄付金等は任意であり、強制などはしていません」というごく当たり前の回答をした。
また、昨年の決算書に書かれている「社会福祉協議会費」とは一体何ですかと聞いたところ、わからないとのこと。
どうやら、各学区に分かれて存在する社会福祉協議会の下部組織(我々の場合T学区)が、独自に作っている寄付項目らしい。
というより、学区別に行われる社会福祉協議会の仕事を、学区とは関係のないN町内会がやっているというところに、この組織のデタラメぶりが露呈している。
地域のムラの古老が、組織の区別もなく金を集め管理しているというのが実情らしいとわかってきた。
だからこそ、そこをほじくり返す奴は「出て行け」なのである。