「させていただく」症候群

 日本人はなんて謙虚なんだろうと思う。

 なんでもかんでも「させていただく」だ。
 「する」で十分だと思えるところでも「させていただく」。

 「シェアさせていただきます」
 「ご挨拶させていただきます」
 「〜をもってご報告とさせていただきます」

 いちいち許可を取れなんて言ってないって。 続きを読む

どこかおかしい?

 特にどうってことのない立て看板。

 よーく見ると、ちょっと変ではないかなという気もします。

 「20km/h以内で通行」

 この場合、「以内」でよいのでしょうか。

 校正を生業にしている人に話を聞くと、「変だなと思ったら逆を考えてみる」のだそうです。
 逆、つまり「20km/h以内」の逆だから、「20km/h以外」ですね。すると、やはりこれはヘンだとわかります。そんな言い方は普通しませんから。 続きを読む

「も」のもんだい

 駅から雨にも濡れずに買い物ができる。なるほど、客にとっては便利だ。で、それで?
 「雨にも」の「も」って何だろう。「も」というぐらいだから、雨以外にも何かあるはずだ。何が言いたいのだろう。
 雪か。しかしこの店は東京にある。そうそう雪に降られることもなく、あえて雪を例に挙げる必要もなさそうだ。

 この看板を手がけた広報担当者は、ひょっとすると「雨に濡れずに」と最初は作ったのかもしれない。しかしその文言にいささかインパクトの不足を感じたのではなかろうか。つまりそれだけではこの店の立地の優位性を強調することができない、と。
 本当なら、「雨にも濡れず、ヤリにも濡れず」くらいの衝撃的なキャッチコピーを考えていたとも考えられる。しかし「ヲイヲイ、そりゃないだろう」と上司にクレームをつけられ、おとなしく引っ込めたのかもしれない。だが担当としては意地がある。せめて「も」だけでも残そうではないかと、密かに画策した、というわけなのである。

 何かを強調したいという情動だけがあって具体的手段がないとき、人はつい、余計な言葉を口走ってしまう。この文章はその典型例だということができよう。

(撮影地:東京都町田市)

罪にならなければよい?

 大事に育てた花を勝手に持っていかれたら、誰だって悲しくなるだろう。

 「持って行かないで」という持ち主の叫びはよくわかる。

 だが、その理由として「罪になる」から、というのはどんなものだろうか。

 罪になろうがなるまいが、持ち主の心を踏みにじる行為は許されないのではないか。

 もうひとつ変なのは、「花を盗むと罪になります」という表現だ。

 盗むと罪に「なる」のではなくて、もともと盗みは罪なのだから。

 さらに、花以外のものを盗んでも罪にはならないのか、といううがった読み方も可能になる。

 妙な理屈をつけないで、「大事に育てている花です」とだけ書いておけば、その気持は通じるのではないだろうか。

(撮影地:神奈川県相模原市)

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未来はたいていこれから来る

橋下大阪府知事の、当選当時のウェブサイトである。

大阪の未来を考えているらしいことはよくわかる。

しかし「未来」というものは、「未来は今どうなっている」とか「未来はかつてどうだったか」などと問うようなものではなく、もともと「これから」を問うものでしかありえない。

「これから」がすなわち「未来」なのだから、「未来はこれからどうなる」という表現は、「昔々のいにしえに、一人の武士の侍が、馬から落ちて落馬して…」というのと同じ。いわゆる冗語である。

もし橋下氏が大阪市長にでもなったら、これからの大阪の未来は将来どうなるのか、心配が懸念される。

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